Debian GNU/Linux 10で発音記号を入力(uim編)
ここではLinuxディストロの1つであるDebian GNU/Linux 10において発音記号の一種である国際音声記号(IPA)を入力する方法について覚え書きをする。
入力方式のインストール
結論から言えば、各々の入力メソッドの環境用にパッケージ化されたX-SAMPAをインストールすればよい。この方法はDebianの派生ディストロ、たとえばUbuntu系やLinux Mintなどでも同様に通用する可能性がある。
Debian GNU/Linux 10の公式ディポジトリには次のようなdebパッケージが見つかった。
$ apt search x-sampa ソート中... 完了 全文検索... 完了 fcitx-table-ipa-x-sampa/stable 0.2.4-2 all Flexible Input Method Framework - IPA-X-SAMPA table ibus-table-ipa-x-sampa/stable 1.3.9-4 all ibus-table input method: IPA-X-SAMPA librime-data-ipa-xsampa/stable 0.38.20180515-2 amd64 RIME schema data - X-SAMPA uim-ipa-x-sampa/stable 1:1.8.8-4+deb10u2 all Universal Input Method - X-SAMPA IPA input support metapackage
FlexibleとiBusとRIMEとuimのパッケージが見つかった。SCIMの場合はscim-tables-additionalというパッケージにX-SAMPAが含まれているようだ。
というわけで、使っている入力メソッド用のパッケージをインストールする。ただし、ここでは以降、uimを例に挙げる。
# apt update; apt install uim-ipa-x-sampa
インストールが無事に完了したら設定を行う。uimの場合、uimのツールバーの上にマウスポインタを合わせて右クリックして表れるメニューから「設定」を選ぶか、コマンドラインからuim-pref-gtk3かuim-pref-qt5を起動する。
$ uim-pref-gtk3
起動するとダイアログ画面が現れる。「全体設定」の「入力方式の利用準備」フレームの中の「使用可能にする入力方式」で「編集」をクリックする。
すると、「使用可能にする入力方式」というダイアログ画面が現れる。「無効」という項目内にある「国際音声記号(拡張SAM音声記号)」を選び、有効のほうに移動させる。そのダイアログ画面を閉じ、OKをクリックしてuim-pref-gtk3を終了させる。ただし、uim-pref-qt5の場合は移動ではなくチェックを入れるインターフェースになっている。
発音記号を入力してみる
文字列を入力することができるテキストエディタなどのアプリを起動する。
そして、uim-toolbar(ツールバー)で「国際音声記号」という入力方式を選択する。矢印のアイコンのあるボタンから「オン」を選択するか、半角/全角キーかShift+スペースキーを押して入力方式を有効にする。
これで国際音声記号の入力が可能になった。記号はキーボードの各キーで直接入力できるASCII文字と1対1または1対多の関係で対応づけられている。この対応関係はマッピングとか写像とも呼ばれている。
Debian GNU/Linux 10の場合、この対応関係は/usr/share/uim/ipa-x-sampa.scmというテキストファイルを開くことによって確認することができる。このテキストファイルを開くために所有者権限は必要ない。
例えば、英語のthの発音を表す記号/ð/はipa-x-sampa.scmにおいて「((("D" )) ("ð"))」と記されてあり、キーボードでASCII文字の大文字のDを入力すればよいことが分かる。同じく英語のthの発音を表す記号/θ/は「((("T" )) ("θ"))」とipa-x-sampa.scmに記されてあり、大文字のTを入力すればよいことが分かる。
英語の発音記号としてよく使われる国際音声記号とASCII文字の写像関係を次の表に示す。ただし、ASCII文字と発音記号がほぼ同じ形のものはそのASCII文字を入力すればよいので、この表には記さない。
発音記号 | ASCCI文字 | 説明 |
---|---|---|
ɪ | I | (大文字のアイ) |
ʌ | V | |
æ | { | |
ɒ | Q | |
ʊ | U | |
ə | @ | |
ɑ | A | |
ɔ | O | |
ɛ | E | |
ɜ | 3 | |
ɚ | @` | (米語) |
˞ | ` | (米語) |
ː | : | (長音) |
ˈ | " | (強勢) |
θ | T | |
ð | D | |
ʃ | S | |
ʒ | Z | |
tʃ | tS | |
dʒ | dz | |
ŋ | N | |
ʔ | ? | |
ɾ | 4 | (米語) |
ɹ | r\ |
残念ながら、X-SAMPAでは/ʧ/や/ʦ/や/ʤ/を入力できない。/t͡ʃ/や/t͡s/や/d͡ʒ/の/͡/という発音記号の入力にも対応していない。/tʃ/や/ts/や/dʒ/とする表記も認められているのでそれで代用するしかない。
また、アメリカ式の発音に多く見られる音節末でのrがかった母音を表す添字の/ʳ/の入力もできない。その代わり/˞/や/ɚ/(ə + ˞)で記すことができる。最近の辞書には後者の記号を使っているものが目立ってきた。
/ɾ/は日本語のラ行に近い音で、アメリカ式の発音でwaterのtやlittleやbetterのttがこの音を持つとされることがある。
英語では、これらの標準的な発音記号に加えて多くの異音を持つので、それらを国際音声記号ではさらに細かく厳密に記すことがあり、その場合は/usr/share/uim/ipa-x-sampa.scmに記されている範囲でX-SAMPAを使って入力することができる。
英語以外の発音記号
X-SAMPAは国際音声記号(IPA)に従っているので、英語以外の多くの言語の発音を表記することができる。Wikipediaで例えばアラビア語なら"Arabic phonology"として検索してみるとよいだろう。
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